スペースX
スペースXの本社ビル | |
種類 | 非公開会社 |
---|---|
略称 | SpaceX |
本社所在地 | アメリカ合衆国 カリフォルニア州ホーソーン 北緯33度55分14.5秒 西経118度19分40.1秒 / 北緯33.920694度 西経118.327806度 / 33.920694; -118.327806座標: 北緯33度55分14.5秒 西経118度19分40.1秒 / 北緯33.920694度 西経118.327806度 / 33.920694; -118.327806 |
設立 | 2002年5月6日 |
業種 | 輸送用機器 |
事業内容 | ロケット打ち上げ 商業軌道輸送サービス 衛星インターネットアクセスサービス |
代表者 | |
売上高 | 20億ドル (2018年) |
従業員数 | >9,500 (2021年5月)[1] |
主要子会社 | ボーリング・カンパニー (2017-2018) |
外部リンク | spacex |
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スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(英: Space Exploration Technologies Corp.)、通称スペースX (SpaceX) は、カリフォルニア州ホーソーンに本社を置くアメリカの航空宇宙メーカーであり、宇宙輸送サービス会社である他、衛星インターネットアクセスプロバイダでもある。火星の植民地化を可能にするための宇宙輸送コストの削減を目的に、2002年にイーロン・マスクによって設立された[2][3][4]。SpaceXは、いくつかのロケットのほか、宇宙船ドラゴンや衛星スターリンク(衛星インターネットアクセスを提供)を開発している。
概要
スペースXは、民間企業として初めて有人宇宙船を国際宇宙ステーション(ISS)に到達させた。2020年に打ち上げたクルードラゴンは、2011年に退役したスペースシャトル以来の、アメリカでは5機目の有人宇宙船になる[5][6]。2020年12月現在、スペースXはアメリカ航空宇宙局 (NASA) とのパートナーシップのもと[7]、国際宇宙ステーション (ISS) への貨物補給ミッションを20回実施している[8][9]。
またスペースXは世界で初めて商用ロケットの再使用を成し遂げたことでも知られている。ファルコン9ロケットは2015年に初の垂直着陸を達成した後[10]、2017年からは実際に回収したロケットが再使用されており[11]、既存の使い捨て型ロケットと比べて半分以下のコストでの打ち上げを実現している[12]。打ち上げコスト低減を活かし、衛星インターネットのスターリンクにも参入しており、2020年には世界最大の衛星コンステレーション事業者となっている[13][14]。
2021年現在は、惑星間宇宙飛行を見据えた超大型ロケット/宇宙船のスターシップを開発中である。スターシップは、スペースXが進める火星植民計画の要となる他、衛星打ち上げ市場に置いても既存のファルコン9/ドラゴンを置き換えるものとなる計画である[15][16][17]。スターシップは完全に再利用可能なロケットとして計画されており、2020年代初頭に予定されているデビュー時には史上最大のロケットとなる[18][19]。
歴史
2001年初頭、イーロン・マスクは非営利団体火星協会と共に、火星に植物の生育室を設置するための資金計画について話し合った[20]。同年10月には、温室を宇宙に送り出すための大陸間弾道ミサイル(ICBM)を購入するため、ジム・キャントレル(英語版)、アデオ・レシ(英語版)とともにモスクワに赴いた。NPO法人ラヴォーチキンやコスモトラス社と会ったがマスクは素人だと思われ、一行は手ぶらでアメリカに帰国した[21]。
2002年2月、一行はマイク・グリフィン(In-Q-Tel(英語版)社社長)とともに、ICBM3基を探すためにロシアに戻った。コスモトラス社と再び会談し、800万ドルでロケット1基を提供されたが、マスクはこれを拒否した。その代わり、彼は手頃な価格のロケットを作れる会社を立ち上げることにした[22]。
2002年にマスクによってカリフォルニア州エルセグンド(英語版)でスペースX社が設立された。設立時には、同年に買収された宇宙開発大手のTRW社から、ロケットエンジン開発に携わっていたトム・ミュラー(英語版)とそのチームが合流している[23]。また、マスクは会社設立のために1億ドルの自己資金を投入している[24]。
2006年にNASAと国際宇宙ステーション (ISS) 物資補給のための打上げ機の設計とデモ飛行を行う商業軌道輸送サービス (COTS) を契約した。2008年に小型ロケットのファルコン1で初めて軌道に到達し(民間資金で開発された液体燃料ロケットでは初)[25]、2010年12月には中型ロケットのファルコン9とドラゴン宇宙船によるCOTSデモ飛行を行い、民間企業としては世界で初めて軌道に乗った宇宙機の回収に成功した。2012年にはISSに民間機として初のドッキングも成功させ、補給物資や実験装置を送り届けた[26]。
2014年には、NASAと有人型のドラゴン宇宙船の開発とデモ飛行を行う宇宙飛行士の商業乗員輸送開発 (CCDev) プログラムを契約した。2020年5月に再び民間企業として史上初となる有人宇宙船の打ち上げ並びにISSドッキングを成功させた。
またその間の2015年には、ファルコン9の第1段により、世界初となる衛星打ち上げロケットの垂直着陸を達成した[27]。2017年からは他社に先駆けてロケットの再使用を実施している。2018年には大型ロケットのファルコンヘビーも運用を開始しており、民間の宇宙船を初めて太陽周回軌道にも打ち上げた。
2016年には、これまでユナイテッド・ローンチ・アライアンス社の独占状態にあった米軍事衛星の打ち上げ市場への初参入も果たしている[28]。
スペースXは民間による火星探査や移民構想も掲げており、2016年にはそのための輸送システムであるインタープラネタリー・トランスポート・システム(後のスターシップ)を発表した[29]。
主要製品
ロケット
- ファルコン1 - 運用終了
- ファルコン5(英語版) - 開発中止
- ファルコン9
- ファルコン9フル・スラスト - 運用中
- ファルコン9ブロック5 - 運用中
- ファルコンヘビー - 運用中
- グラスホッパー - 実験機
- インタープラネタリー・トランスポート・システム - BFR ( スターシップ ) に移行
- スターシップ/スーパー・ヘビー - 開発中
バージョン | ファルコン1 | ファルコン9 | ファルコンヘビー |
---|---|---|---|
第1段 | 1 × マーリン1A(2006年~2007年) 1 × マーリン1C(2008年以降)[30] | 9 × マーリン1C (v1.0) 9 x マーリン1D (v1.1) | 9 × マーリン1D のブースターを3基クラスタ |
第2段 | 1 × ケストレル | 1 × マーリン1C (v1.0) 1 × マーリン1D (v1.1) | 1 × マーリン1D |
全高 (最大; m) | 21.3 | 54.9 (v1.0) 69.2 (v1.1) | 70 |
直径 (m) | 1.7 | 3.6 | 3.6 |
離床推力 (kN) | 347 | 3,807 (v1.0) 5,885 (v1.1) | 17,000 |
離陸重量 (トン) | 27.67 | 318 (v1.0) 506 (v1.1) | 1,400 |
フェアリング直径 (内径; m) | 1.5 | 5.2 | 5.2 |
ペイロード (LEO; kg) | 450 | 8,500–9,000 (v1.0) 13,150 kg (v1.1) | 63,800 |
ペイロード (GTO; kg) | — | 3,400 (v1.0) 4,850 (v1.1) | 26,700 |
値段 (百万. USD) | 7 | 62 (再使用) 95 (使い捨て)[31] | 90 (再使用) 150 (使い捨て)[31] |
1kg毎の最低の値段 (LEO; USD) | 15,555 | 4,167 | 2,351 |
1kg毎の最低の値段 (GTO; USD) | — | 11,446 | 5,618 |
成功率 (成功/総計) | 2/5 | 4/5 (v1.0) 14/15 (v1.1) | 1/1 |
宇宙船
- ドラゴン(無人輸送型)
- ドラゴン2(無人輸送型、有人型)
- スターシップ HLS(月着陸船)
ロケットエンジン
- ケストレル
- マーリン
- ドラコ
- スーパー・ドラコ
- ラプター
サービス
発射場
- オメレク島 ロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛試験場
- ケープカナベラル空軍基地 SLC-40
- ケネディ宇宙センター LC-39A
- ヴァンデンバーグ宇宙軍基地 SLC-4E
- テキサス州ボカチカ スターベース
ファルコン1は全てオメレク島にて打ち上げられている。ファルコン9はSLC-40、SLC-4E、LC-39Aの三つの射場から打ち上げ[37]、ファルコンヘビーはLC-39Aから打上げられている。
備考
スペースXは成功したベンチャー企業にも拘わらず、2018年現在いまだに株式公開 (IPO) を行っていない。同社の評価額は2017年7月時点で212億ドルと見積もられており、これはアメリカの株式未公開企業(ユニコーン企業)の中では4位に位置する[38]。イーロン・マスクは2013年に「IPOは火星移民船が定期的に飛ぶようになってから」と、また2014年には「どこかのPEファンドに経営を支配され、短期的な利益を得ることに使われるのだけは勘弁してほしい」と語っており、スペースXが創業時からの目標である火星移住構想から離れないよう株式を公開しない考えを示している[39]。
その他
Netflixで配信されるドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のシーズン2第7話において、副大統領のスタッフとして働く野心的な若者コナー・エリスが副大統領夫人に辞意を伝える際に、報酬が良く自身の成長も期待できるとする転職先を「スペースX社」と明かす場面がある。
関連項目
出典
- ^ . https://www.cnbc.com/2021/03/04/spacex-doj-hiring-subpoena-is-definition-of-government-overreach.html
- ^ Kenneth Chang (2016年9月27日). “Elon Musk's Plan: Get Humans to Mars, and Beyond”. 2018年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月27日閲覧。
- ^ “Making Life Multi-planetary”. relayto.com (2018年). 2018年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月4日閲覧。
- ^ Shontell. “Elon Musk Decided To Put Life On Mars Because NASA Wasn't Serious Enough”. Business Insider. 2019年4月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月2日閲覧。
- ^ “インターステラ稲川社長が語る「SpaceXの偉業を支えた“天才技術者”」 民間による有人宇宙飛行成功の原点とは?”. 2021年3月21日閲覧。
- ^ “Launch Schedule”. 2018年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月16日閲覧。
- ^ William Graham (2015年4月13日). “SpaceX Falcon 9 launches CRS-6 Dragon en route to ISS”. NASASpaceFlight.com. 2015年5月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月15日閲覧。
- ^ “Space Station – off the Earth, for the Earth”. 2019年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月3日閲覧。
- ^ “SpaceX”. SpaceX. 2021年1月1日閲覧。
- ^ Matthew Weaver (2015年12月22日). “"Welcome back, baby": Elon Musk celebrates SpaceX rocket launch – and landing”. 2017年2月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月1日閲覧。
- ^ Amos. “Success for SpaceX "re-usable rocket"”. bbc.com. BBC News. 2017年3月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月30日閲覧。
- ^ Patel. “SpaceX now operates the world's biggest commercial satellite network”. MIT Technology Review. 2020年8月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月9日閲覧。
- ^ Lauer. “SpaceX Is the New King of Commercial Satellites, and It's Just Getting Started”. Insidehook. 2020年1月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月9日閲覧。
- ^ Chris Gebhardt (2017年9月29日). “The Moon, Mars, and around the Earth – Musk updates BFR architecture, plans”. オリジナルの2017年10月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20171001081759/https://www.nasaspaceflight.com/2017/09/the-moon-mars-earth-musk-updates-bfr-plans/ 2020年5月16日閲覧。
- ^ Musk, Elon (March 1, 2018). “Making Life Multi-Planetary”. New Space 6 (1): 2–11. Bibcode: 2018NewSp...6....2M. doi:10.1089/space.2018.29013.emu.
- ^ Elon Musk (29 September 2017). Becoming a Multiplanet Species. 68th annual meeting of the International Astronautical Congress in Adelaide, Australia: SpaceX. 2017年12月31日閲覧。
- ^ “Mars Presentation | 2016”. relayto.com (2018年). 2018年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。Feburary 3, 2021閲覧。
- ^ “Elon Musk says moon mission is "dangerous" but SpaceX's first passenger isn't scared”. cbsnews.com. 2018年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月2日閲覧。
- ^ アシュリー・バンス著『イーロン・マスク 未来を創る男』pp. 99, 102–103.
- ^ Vance, Ashlee (2015年5月14日). “Elon Musk's space dream almost killed Tesla”. Bloomberg L.P.. オリジナルの2017年2月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170223011256/https://www.bloomberg.com/graphics/2015-elon-musk-spacex/ 2015年6月7日閲覧。
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- ^ Wayne, Leslie (2006年2月5日). “A Bold Plan to Go Where Men Have Gone Before”. The New York Times. オリジナルの2020年4月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200412130718/https://www.nytimes.com/2006/02/05/business/yourmoney/a-bold-plan-to-go-where-men-have-gone-before.html 2015年2月16日閲覧。
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- ^ “ド派手な「火星探査」や「再利用ロケット」の裏でばく進するSpaceXのビジネス”. ITmedia (2016年6月17日). 2016年6月17日閲覧。
- ^ “私たちが火星人になる日 - イーロン・マスクの火星移民構想は実現するか”. マイナビニュース (2016年11月15日). 2016年11月26日閲覧。
- ^ “http://www.spacex.com/updates.php”. スペースX (2007年12月10日). 2008年6月12日閲覧。
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- ^ “Monster Progress Update (Mostly Falcon 9)”. スペースX. (2007年8月17日). http://www.spacex.com/updates.php#Falcon9Update081507
- ^ “Falcon 1 Overview”. スペースX. (2012年2月26日). オリジナルの2013年4月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130430222417/http://www.spacex.com/falcon1.php
- ^ “Falcon 9 Overview”. スペースX. (2012年2月26日). http://www.spacex.com/falcon9.php
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- ^ William Graham (2017年12月20日). “SpaceX at 50 – From taming Falcon 1 to achieving cadence in Falcon 9”. NASASpaceFlight.com. 2024年5月28日閲覧。
- ^ “【電子版】スペースX、未公開企業の評価額で全米4位に-約2兆3500億円”. 日刊工業新聞 (2017年7月28日). 2018年9月29日閲覧。
- ^ “イーロン・マスクの「人類火星移住構想」と勇敢な天空の旅行者たち”. COURRiER (2014年10月22日). 2018年9月29日閲覧。
外部リンク
- スペースX公式サイト (英語)
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